第5回OISTAT建築設計競技報告
草加叔也
JATET誌31号に告知をした「第5回OISTAT建築設計競技」の応募が3月に締め切られ、
そのための審査が、本年3月末にスロバキアの首都ヴラティスラバで行われた。また、6月7日からプラハで開幕したプラハ・カドリエンナーレ'99の会場で入賞作品を含めた展示会と受賞者の表彰式が開催をされた。
この建築設計競技に審査員として参加をし、またプラハでの授賞式に立ち会うことができた一人として、その経過と結果についての概要を報告する。
審査委員会と審査経過
OISTATが主催をする建築設計競技は、オランダ(1987年)、ロシア(1990年)のナショナルセンターが中心になって開催をするものに続いて今回が5回目を数える。今回は、チェコの首都プラハにある既存施設を含む具体的な敷地をテーマにした設計競技であるが、その中心的な役割を担ってきたのは、スロバキアのナショナルセンターであった。
審査委員会は、実際には4回開催されたが、欧米との距離的な課題もあり筆者が参加したのは応募された作品を審査する最後の審査委員会のみであった。もちろんそれ以前の3回の審査委員会においては、今回の建築設計競技の課題や具体的な進め方、競技規則や日程などが議論され決定されてきたということであった。
審査委員会は、異なった国籍を持つ5人の審査委員(別表1)で構成をされ、3月27日から31日までの5日間をかけて行われた。
今回応募された作品総数は実に226作品で、世界30ヶ国からの参加であった。前々回行われたオランダでの建築設計競技での応募作品数が16ヶ国341作品、ロシアでの建築設計競技が24ヶ国238作品であることと比較すると、若干応募作品数が伸び悩んでいるようにも思えるが、参加国数は大きく伸びていることがわかる。
また我が国からの参加作品数も、オランダ開催時に2作品、ロシア開催時に3作品であったものが、今回はポーランド(33作品)、ドイツ(32作品)、アメリカ(28作品)、ロシア(23作品)に続く21作品の応募があり大きく躍進していることがわかる。
さて、審査委員会であるがOISTAT建築委員会の委員長であるJan
Kramer(オランダ)氏のコーディネイトとスロバキアナショナルセンターの献身的な協力によって、滞りなく作業が行えたものと考える。実際の審査委員会は、スロバキアの首都ヴラティスラバの市内でドナウ川に隣接して建てられているINCHEBAという見本市会場の一部であるホールCに応募作品全てが展示をされ、その全作品が展示されている場所で終始審査が行われた。応募作品数が伸び悩んでいるとはいえ、226作品が展示された会場の広さたるや片側100mに近い壁面を持つ展示場であることから、審査のために毎日歩き回る距離は審査委員にとってはかなりの重労働になったに違いない。
5日間の審査委員会の詳細な過程について明らかにすることは紙面の都合上不可能であるが、大まかに言うと5日間に細かなセレクションも含めると約10回程度のセレクションが行われたと記憶している。第1日目の第一段階こそ、各審査委員の個人的な意見により次のセレクションに残す作品を選定したが、そこでも2対3に賛否が割れた作品については、翌日意見の割れた作品一つづつについて5人の審査委員が協議をして残すか残さないかを決定していった。
審査は、あらかじめ全ての審査員がそろった時点で共通の評価基準の統一が協議され、以下のようなことが確認をされた。
1. 新しい劇場としての可能性
2. 都市計画的な視点
3. 劇場としての機能の整備
4. 劇場空間のデザイン
5. 外観のデザイン
6. プレゼンテーション
ただし、この中での1.に対する比重は、常に他の評価基準を上回るものとして全ての審査員が重要視して審査を行った。
審査結果と授賞式
審査の結果については、審査終了後速やかにOISTAT建築委員会のホームページ<http://www.oistat.nl/comis/architecture/pq.html>に掲載をされたが、受賞者の個々の氏名(別表2)については、「第5回OISTAT建築設計競技」の結果をまとめたカタログによってはじめて明らかにされた。
授賞者の紹介と賞の授与式については、プラハ・カドリエンナーレ'99期間中の6月10日夕刻から、プラハ市内を流れるヴルタヴァ(VLTAVA)川に浮かぶボートの上でOISTAT会長であるDick
Durst氏や今回の建築設計競技の審査をした筆者を含め審査員の内4人の他に、数多くの建築委員会の委員やゲストに祝福をされてにぎやかに行われた。また賞のプレゼンターについては、建築委員会の委員長であるJan
Kramer氏が務めた。
ただし、第1位を受賞したPreobrajenskaya Valeria(ロシア)氏については、あらためて翌日に行われたプラハ・カドリエンナーレ'99の表彰式で正式に発表と賞の授与が行われた。
「第5回OISTAT建築設計競技」総評
今回の建築設計競技では、具体的な敷地が示されていることと、既存施設がその敷地に建つことなどアイディアコンペとは言いながらも、ある一定のリアリティが求められた分、応募作品にいくつかの傾向が見られたように考える。その一つは、既存施設をいかに生かして劇場空間としての魅力を構築していくのかというリアリティ派であり、もう一つはアイディアコンペであることの自由度を生かしたバーチャルリアリティ派ではないかと考える。さらに、これらリアリティ派と一線を画す作品もいくつか見受けられた。具体的には、劇場を既成の建築的作業や演劇的な行為の延長線上に構築するのではなく、空間や環境との一部として捉えた、さらに自由で魅力的な表現作品の提案となっていた。
今回、審査員会は全員の一致で第1位から9位までの入賞作品と優秀賞6作品、そして展示会とカタログ掲載に推薦する8作品を選出した。結果的には、日本から参加した作品が第4位に入賞し、また優秀賞の3位に選ばれたこと、さらに2つの作品が展示とカタログ掲載に推薦されたことは大変にうれしい結果であった。
ただし、ロシアからの応募作品は、それ以上に優秀な成績を残していること、また上位に入賞している作品は女性の作品が多いことなども今回の審査結果の特色として上げられる。さらにもう一点今日的な特長を上げるとすると、国籍ということの意味が大変に薄まっていると感じた。例えば、第4位に入賞した作品も日本からの応募ではあるが、日本の方とドイツ語圏と思われる方の共同作品であり、アメリカからの応募作品にも日本の方と思われる名前が書かれていたからである。
おわりに
最後に審査員は一同、今回の建築設計競技で優秀な結果を得られた方々に対して等しくおめでとうと申し上げたい。また、それ以上に世界各国から応募された多くの参加者の方々一人一人にお礼を申し上げたい。そして、次に機会にも是非参加をしていただき、プラハで祝福をされることを期待したい。また、今回の建築設計競技を整然と進行されたスロバキアナショナルセンターの尽力とOISTAT本部の努力に対して、深く感謝を申し述べたい。
尚、「第5回OISATA建築設計競技」の結果と作品を収録したカタログを有料で頒布する予定です。予約・問い合わせは、社団法人劇場演出空間技術協会事務局までお願いをいたします。
(第5回OISTAT建築設計競技審査員)
| Prizes |
| |
Name |
Country |
| 1st prize |
Preobrajenskaya Valeria |
Russia |
| 2nd prize |
Sigrid Zender
Peter Götz |
Germany |
| 3rd prize |
Michail Iliyevsky
Maria Iliyevskaya |
Russia |
| 4th prize |
Naoko Nishimoto
Joerg Rainer Noenning |
Japan |
| 5th prize |
Monika Deitmer |
Germany |
| 6th prize |
Rastialav Janak
Peter Chládek
Ales Votava |
Slovakia |
| 7th prize |
Aourov Val
Tarasova Anna
Joukov Konstantin |
Russia |
| 8th prize |
Nochovkena V.A.
Kotova E.V. |
Russia |
| 9th prize |
Sirota Ekaterina Mikhailovna
Olentchenko Natalya |
Russia |
| Honorary Mentions |
| |
Name |
Country |
| First |
Kostur Slavomir
Spyra Marcin
Wlodarczyk Michal |
Poland |
| Second |
Blazej Jekot
Lucian Moj |
Poland |
| Third |
Yoko Morita
Yoshihiro Kurita |
Japan |
| Fourth |
Boris Bähre |
Germany |
| Fifth |
Alexander Bednarsky
Piort Michal Brzychcy
Rafal Stachura
Maciej Szczyglowski
Jan Kubec |
Poland |
| Sixth |
Jan Kapsenberg
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